七夕

 年に一度、おり姫とひこ星が天の川を渡って逢えるという日であるが、毎年が梅雨空でそんなロマンチックな夜空に、ほとんど御目ににかかったことがない。(ほんとは旧暦の行事なんだろうが・・・)それでも、いまだに鮮明に天の川が頭上に広がっていた光景を覚えている。あれは小学校に上る前後の頃だったと思うので、かれこれ五十年前ということになる。小学校三年生の一学期まで、生まれ育った宮崎県の国富町にあった自宅の庭での夏の夜空であった。あの頃は日本全国の街の明かりが乏しかったので、都会や工業地帯でない限り夜空は美しく見えて、天の川は何も珍しいものではなかったのであろう。しかし、たしか傍に母と七歳年上の兄が居たあの日の光景がいまだに感動として記憶に残っているとは、自然の力とはどれだけ偉大なものであることか!今の子供たちが夜の電気の中で見るテレビ、パソコン、ゲーム、そしてプラネタリウムやテーマパークの電飾パレードなどが、どれだけの感動として五十年後の、その子の記憶の中に残っているのだろうか・・・  福井県の大飯原発が再稼働した。 あの頃の天の川を知ってる世代が電気を消し子供たちを外に連れ出したら、ひょっとすると重く垂れこめた梅雨の夜空の切れ間に天の川が見えるかも知れない・・・

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