温かさの宿る瞬間

 誰にでも心の中に温かな感情が宿る瞬間がある・・・

 

 先日、久しぶりに友人が経営する店のホームページを開いた。そこに講演会があるのをみつけ,その人物を検索してみたらとてもユニークそうで興味を抱いた。さっそく二年振りに友人に連絡を取ってみると出席を快諾してくれたのであった。

 

 当日になり、講演会場の最寄り駅である阪急上桂駅を下車して暫く歩いていると、数十メートル先をアロハシャツを着た恰幅の良い男性が、お連れを伴ってぶらぶらと歩いている。道草と言おうか時折り立ち止り周辺の景色をカメラに収めているし、そのユニークな後ろ姿に「きっと、あの人は今日の講演者に違いない!」と直感した。追い越すに追い越せず距離を保ちながら様子を窺い歩いていると、案のじょう友人の店(えほん館)の前で盛んにカメラのシャッターを切っていた。

 

 講演者とは京都市出身で現在は鹿児島市の在住である作家の清水哲男氏である。会場は二十人も入れば満席の店で、『月がとっても青いから』という著書を主テーマに話が進められた。世界中の人が憧れる京都の華やか煌びやかな面ではなく、それらを裏で支える職人達が住む著者の生まれ育った下町の長屋で生きる人々の様子を、話しがあっちこっちに飛びながらの講演であった。

 

 氏と会話する機会もあったので、気になる長編の書き方の極意を尋ねてみたり、購入した二冊の著書にサインを頂き、さっそく自宅に持ち帰り読みだすと止まらない。氏は昭和29年生まれで私は31年生まれ、生まれ育った土地も家庭環境も全く異なるが、同じ時代の空気が心を共感させる。見かけの豪胆さと異なり、何でこんなに優しくも温かい文章が書けるのか、そして接する人々への観察が鋭く読む者に状況をありありと描かせられるのか・・・

 

 二冊の本を読み終えたあと、何か自分の心が『優しく温かく』なったように感じた。文章力も天から選ばれ授かった者だけの才能とは思う。でも、私にも「こんな文章が書けたらなぁ~」とため息の日々である。取りあえず、今までの私の人生までも肯定してくれた『・・・人生には寄り道、回り道が必要なんや・・・』という主人公(哲男少年)の祖父さんが遺した言葉を信じて、これからも生きてみようかなぁ・・・

 

 

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コメント: 4
  • #1

    むっちゃん (火曜日, 30 7月 2013 11:11)

    「あっ、そうだ!まだブログを見ていなかった!」
    明日ご来店くださるということで突如思い出し、読ませていただきました。
    (今頃、すいません・・・!)
    <何でこんなに優しくも暖かい文章が書けるのか>という言葉に、
    清水氏の著書のファンでもある私は非常に共感しそれだけで涙ぐんでしまいました。
    彼の作品には彼の人格がにじみ出ていると思います。
    ぜひ次の機会には清水氏を囲んで一杯やりましょうね♪

    いつもありがとうございます。。。☆

  • #2

    ともさん (水曜日, 31 7月 2013 22:54)

     数冊ある清水氏の著書の中で、もう一冊を購入して読ませて頂きました。それが『熱風共和国』でした。もうどこにも置いていないという最後の1冊ということでプレミアム品ですよね。『月がとっても青いから』とは違い少年達のひと夏の経験というか、熱い友情が生き生きと描かれていて切ないほど感動しました。
     
     私も小学校を二度変わり、3つの小学校をほぼ2年間隔で通いました。特に宮崎県の田舎町から、まだ復帰前の沖縄に小学校3年生の夏休みに転校するときは、きっと本の中の主人公側でなく異国に帰る友人側の気持ちに近かったかも知れませんね・・・

     あ!むっちゃんをクリックしてもホームページが開きませんよ~ 何か入力間違ってませんか?

  • #3

    むっちゃん (木曜日, 01 8月 2013 20:25)

    ともさん、失礼しました。
    HPのアドレスではなく、メールアドレスを入れていました・・・(汗)

    小学生の時、私は転校が嫌で、両親の憧れのマイホーム購入を断念させた覚えがあります。
    隣の学区という近場だったのに。(笑)
    学校が大好きでした。担任の先生が大好きでした。友達が大好きでした。
    遊ぶのが大好きな男勝りの子どもでした。そして勉強も好きでした。
    清水氏に負けず劣らずの貧しい生活でしたが、最高に楽しく幸せな子ども時代だったと思います。

    何よりも、大人が入り込まない「子どもだけの世界」が、確かに存在していました!

    様々な問題にも自分たちで相談し考えて行動していました。
    どうしようもなくなったら大人に相談するという、そんな子どもの世界で生きていました。
    清水氏の著書の世界と同じです。
    (両親が共働きで子どもの世話をやく時間が無かったのが幸いでした!)
    ともさんが2回も転校されていることに胸がジンとしました。

    時々ブログにお邪魔させてもらいますね~♪

  • #4

    ともさん (土曜日, 03 8月 2013 16:15)

     そうやね~ 人の人生は其々がそのまま小説になりますね。清水氏のような才能があれば皆が文章に表現できるのにね。歌、映画、演劇、小説、絵画、絵本それぞれにプロの作家がいて作品を出す。それに人々は自分の人生を重ね共感する・・・ そして人々は生きる希望をみつけていくのですね。

    なくても生活できるのが芸術、しかし、なくては生きてはいけないのが芸術というところかな?

     あ!私の少年期から思春期のこと2008年に書いた『心の時代に思うこと 第8号』に書いてます。またいつかご覧にいれますね。

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